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占星学でみる日本近代文学史63 堀辰雄 伊藤整 

 新心理主義と呼ばれ、海外の作家の影響から、新しい試みをした人たちですが、二人とも山羊座。スッキリ型の井伏鱒二のあとなので、双子座の私としてはちょっと読みにくいという印象をもっています。
たまたま似たスタンスで、同じ星座ということで比較してみましょう。

堀辰雄 太陽山羊座 月乙女座 金星水瓶座 火星天秤座
伊藤整 太陽山羊座 月牡牛座 金星魚 座 火星蠍 座

 堀辰雄の「風立ちぬ」は肺結核だった作者が同じ病気の恋人とともに送った療養生活を元に書いた作品です。軽井沢で療養した時間が長かったので、作品にはそのイメージが強いですね。またこの人の火星(男性像)が天秤座のためか、本来の山羊座カラーよりもさらにスマートなイメージが一般に持たれているのではないでしょうか。しかし、読み始めると、ガッツリ山羊座です。また、自分の悩む姿・苦しむ姿を描くことに長けているのは、主に乙女座の個性です。作品のモデルとなった矢野綾子さんの生年月日が不明で残念です。(誰か知っている人がいたら教えてください!)

 それに比べると、伊藤整の火星は蠍座。自分のイメージは「研究者」なわけです。小説家としても知られますが、評論家としてはさらに有名でした。1954年「婦人公論」にのせたエッセイから『女性に関する十二章』として一冊に纏めたところベストセラー映画出演や評論で活躍。また、翻訳したD・H・ローレンスの『チャタレイ夫人の恋人』がわいせつ文書として摘発・起訴されました。まさに時の人だったわけです。蠍座の影響が強いと、性的な探求に対して、退くところがありません。

風立ちぬ・美しい村 (新潮文庫)
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変容 (岩波文庫)
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占星学でみる日本近代文学史62 井伏鱒二(水瓶座・プラスサインだけのホロスコープ) 

 井伏鱒二は最近では「黒い雨」「山椒魚」でしか知られていないようですが、それは残念ですね。

 私は井伏鱒二の作品が大好きで、ときどき就寝前に読んだりします。この人の作品は、水瓶座らしい(冬のサインらしい)、すっきりと形式感の整った文体が魅力で、文章もその精神も澄み切っています。そのさまが、とても水瓶座的なさわやかさをもっていて、とても好きです。

 1898年2月15日生まれ。調べてみれば、太陽水瓶座、月射手座、水星・金星・火星水瓶座、木星天秤座、土星・天王星射手座、海王星・冥王星双子座、と全部プラス星座で、しかも、火は射手座だけ!これは独特のさわやかさが出るはずです。これは、本質的に感情的に拘泥した表現形式を嫌います。

 ようするにクヨクヨ型ではないのです。そんな人が「黒い雨」のような作品を書く。すると、決して、直接被爆した一人の人をとりあげてその感情的苦しみをドラマチックに描写したりということはしません。もちろんこの作品にも悲惨な描写は多く出てくるのですが、それでもそれらは、一市民としての感情の抑制のきいたスタイルで描かれてゆきます。

 今回の大震災でも、水瓶座の人たちが東京においては、のんきなまでに冷静に情報処理されていたのは印象的でした。

 例えば、私のマンガ論でも紹介しているように、水瓶座と天秤座は決してスポーツ根性ものを描きません。スポーツをテーマにしてもあだち充氏の「タッチ」みたいになります。大仰な表現を嫌い、あくまで等身大であり、人間そのものから目がそれることはないのです。

 戦争をあつかった小説はたくさんあります。(のちにふれる機会があることでしょう。)
 親しみやすい漫画作品では、最近ではこうの史代氏の「夕凪の街 桜の国」が話題になりました。彼女はまた別の風のサインである天秤座(この星座も、スポ根はゼロ!)で、月は射手座です。この作品も、原爆投下時の描写は最小限になっています。それよりも、その後の日常生活を描くことによって、原爆というものの意味を問うものとなっています。

 作者の体験の仕方が違うとはいえ、魚座マンガ家の中沢啓治氏の『はだしのゲン』における苦悶にみちた直接的な表現とはいかに違うか実感されます。

こうした点でも「黒い雨」こそまさに水瓶座的な小説と言えるのかもしれません。


黒い雨 (新潮文庫)
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山椒魚・遙拝隊長 他7編 (岩波文庫 緑 77-1)
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夕凪の街桜の国
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はだしのゲン (1) (中公文庫―コミック版)
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占星学でみる日本近代文学史61 川端康成(双子座) 
川端康成1899年6月14日生まれ(太陽 双子座、感情を表す月 獅子座か乙女座)

 川端作品は「雪国」「伊豆の踊子」があまりに有名ですが、むしろそれ以外の作品における多様性が魅力です。(ふたご座が一つのやり方だけを突き通すということはあまりないことです。)

 川端は幼いときに両親を病気で全員失っていて、事実上天涯孤独の身で、作家として成功しました。作品には自己を見つめる冷徹な目が常に潜んでいます。(これも非常にふたご座的感性です。ふたご座作家が常に知的で冷徹だというわけではありません。厳しい視線を向けるとき、それが作品内に反映されて、読者にその厳しさが伝わってしまう、そんな要素があるのがふたご座的だとこの場合は言えるでしょう。)

 この人はガス自殺したと言われていますが、ガスストーブ事故説があり、私もどちらかというと後者を支持しています。というのも、知的な双子座作家が悩んでいたならば、どこかで誰かに事前に言葉で漏らしているはずだからです。それに、少なくとも書かれたもので見る限りは、直前まで作者は自殺反対派であり、そのあたりは双子座さんはポリシーに忠実なはずです。(というか、自分の信条と違うことをいきなり臨機応変にやろうとしても、長いこと迷うはず。)とはいえ、自殺は、その人の精神的な個性まで押しつぶすほどの大きなストレスが背景にあったはずですから、なかなか決定的な判断はできません。

 また、川端のような日本文化色豊かな作品を読むと、本当に芸術とは何か、そもそも文学は芸術家という問題を考えさせられます。音楽であれば、抽象性があった方が良い。誰も、ザルツブルグ文化を味わおうとしてモーツァルト(水瓶座)を聴いたりはしないし、ビートルズとリヴァプールの関係も然り。ヨハン・シュトラウスJr.(蠍座)ですら、すでに私たちはウィーンをきこうとしているのではないでしょう。むしろシュトラウスの音楽を通じてそれぞれのウィーンを味わうのです。

 しかし文学、特に小説では、必ず具体的なものがあるし、それを抜きに語ることはできない。名詞があり、再現しようとしている現実の空間は厳然としてあったのであり、その現実のものの方の良さは、文学作品の良さとニア・イコールという場合もあるでしょう。しかし、それでも川端文学を読んでいると、では、この素晴らしい日本文化を伝達する媒介としての文学という発想がそれほど非芸術的なものとは感じられなくなってきてしまいます。というより、先に、文学が、現実文化を伝える器であったならそれは素晴らしいことなのではないか、そんなことさえ積極的に感じさせてくれます。

どなたにもおすすめしたいのは「掌の小説」です。
「伊豆の踊子」とはまた違う世界が魅力です。

掌の小説 (新潮文庫)
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占星学でみる日本近代文学史60 戦前昭和時代の文学 
 大正文学の百花繚乱の後の戦前昭和時代の文壇の雰囲気をまとめてみます。
この時期、海外では第一次世界大戦後の状況を受けて、日本にもそのままこれらの影響がきます。白樺派が生まれ、また大正時代に活躍した芥川龍之介の文章等に「芸術(家)」という言葉が目立つのに対して、この時期、海外からの新しい思潮と政治活動的な色彩が入ってきます。

(大正までの芸術思潮=写実主義・芸術至上主義・個人主義リアリズム)
  ↓
(戦前昭和時代=大正末年~昭和10年頃)

A モダニズム文学(ダダイズム・未来派・表現派・心理主義・精神分析等の影響)
 新感覚派:横光利一(魚座)、川端康成(双子座)
 新興芸術派倶楽部:梶井基次郎(水瓶座)、井伏鱒二(水瓶座)
 新心理主義:堀辰雄(山羊座)、伊藤整(山羊座)

B プロレタリア文学 
小林多喜二(天秤座1903年10月13日)、徳永直(水瓶座1899年1月20日)、宮本百合子(水瓶座1899年2月13日)、葉山嘉樹(魚座1894年3月12日)、中野重治(水瓶座1902年1月25日)、佐多稲子(双子座1904年6月1日)、壺井栄(獅子座1899年8月5日)

C 転向文学(戦時中の弾圧により政治性・思想性を放棄)
村山知義(水瓶座1901年1月18日)、島木健作(乙女座1903年9月7日)、高見順(水瓶座1907年1月30日)中野重治(水瓶座1902年1月25日)、徳永直(水瓶座1899年1月20日)、林 房雄(双子座1903年5月30日)

D 国粋主義傾向
保田 與重郎(牡羊座1910年4月15日)、蓮田 善明(獅子座1904年7月28日)

 モダニズム的な文学はさまざまですが、プロレタリア文学は風のサイン(天秤座・水瓶座・双子座)が多いですね。ちょうどメッセージ性の強い音楽を書いたビートルズのジョンとポールやボブ・ディランが風のサインだったように、当時の風のサインの文学者にも同じような気質が感じられます。
 しかしながら、転向文学同様に、島木健作をのぞいてみんな風のサインです・・・。

 国粋主義的な色彩の強かった二人の作家が火のサインだというのも、頷けるといえば頷けますが、あまり一般化するのは危険ですね。


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占星学でみる日本近代文学史59 中島敦(牡牛座) 

 中島 敦 1909年5月5日生まれ。太陽牡牛座 月蠍座 金星牡牛座 火星水瓶座。

 私たちの多くが彼の作品を、学校で読んだ「山月記」で知っていることと思います。
 中国を題材に取った水墨画調の作品は、ともすると意識が遠ざかりがちな人もいるかもしれませんが、読んでみるといつもその読みやすさに驚かされます。牡牛座の方というのは基本的に自己表現が下手で、ゆっくりじっくり表現するものなのですが、一度文学作品ということになれば、立て板に水の人が多くいます。彼らは表面は寡黙でも、内面は大変雄弁なのです。牡牛座作家で同様の文章のイメージを与えるのは「リング」鈴木光司さんでしょう。

 33歳で夭折したこの天才は、流れるような文章の中に「己とは何か」という哲学的な問いを刻むことのできる数少ない人でした。その点では同じ牡牛座のシェイクスピアにも通じるものがあります。同じ自己探求でも、水瓶座の夏目漱石などといかに違っているか、考えてみると面白いです。

 今回紹介するのは「悟浄出世」「悟浄歎異」です、これはあの“西遊記”の登場人物・沙悟浄を主人公にしたものです。一般にたくさんある孫悟空を中心に置く冒険譚も楽しいですが、中島がまず沙悟浄を主人公にしたところに彼の天才性があります(鋭い!)。この作品は、彼が生きていたらその後長いシリーズとして展開しただろうと思われる『わが西遊記』の一部として残された最初の二編の部分です。これらは沙悟浄の自分探しの旅なのですが、一般の「自分探し」小説と比べて特に際だっている牡牛座性とは「自分とは何かという問題に作者が答えを出している」点かもしれません。牡牛座作家の世界は完全に完結しています。(その点でも牡牛座さんは大変な頑固者ばかりです)。自分探しの作品といえばアニメ「エヴァンゲリオン」などのように、作品自体は黙して語らず、本質の部分を鑑賞者に丸投げして呼びかけるというやり方もありますが、中島敦ほか牡牛座作家では、作者の持論に対する想いには並々ならぬ強さがあります。現実生活で会話の苦手な牡牛座さんは、その作品もまた読者との対話型ではなく、自己完結した確固とした世界を提供してくれます。

 『わが西遊記』を中島敦は「僕のファウストにする」という意気込みで書きはじめたとのことです。(完成したものを読んでみたかった。)

「悟浄出世」の最後は次のようになっています。

「どうもへんだな。どうも腑(ふ)に落ちない。分からないことを強いて尋ねようとしなくなることが、結局、分かったということなのか? どうも曖昧だな! あまりみごとな脱皮ではないな! フン、フン、どうも、うまく納得がいかぬ。とにかく、以前ほど、苦にならなくなったのだけは、ありがたいが……。」

 第1作目の締めくくり部分としてあまりに見事すぎる文章です。

 歴史に「もしも」は禁物ですが、「中島敦もっと長生きしてくれていれば・・・」と思わずにはいられません。ひょっとしたら日本における「西遊記」のイメージ自体が大変化していたかもしません。

山月記・李陵 他九篇 (岩波文庫)
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